映画「パーフェクト・センス」を観て

毎度ながらネタバレ込みの感想文です。

人類滅亡は昔からある映画のテーマですが、最近、ちょっと毛色が変わってきてるような気がする。
迫り来る大惨事にパニックする群衆や、大がかりな特撮、ってのがこの手の映画の必須の要素だと思うが、最近はあえてそれを省いた作品が増えているような気がする。
たぶん、CG技術が進化し、映像的には何でもありになってきて、あえて演出だけで恐怖を描いてやろう、と言う作り手側のチャレンジ精神のようなものを感じる。
この作品もその部類だ。

大がかりな特撮も、パニックシーンは一切なし。
しかし、人類滅亡のシナリオはかなり衝撃的なもの。
ウィルスによるものなか、あるいは遺伝的なものなのか、劇中では最後まで分からずじまいだったけど、五感、つまり嗅覚、味覚、触覚、聴覚、視覚を人類が徐々に失っていくというもの。

また、その失い方がかなり不気味だ。
まず、数人の人間の嗅覚が失われる。原因究明を進めるものの、嗅覚喪失は全世界にあっという間に広がる。そして、嗅覚を失った人間たちは、それを補完するように味付けを工夫しだし、いつしか自分たちが嗅覚を失ったことに慣れてくる。…ここらへん、大震災後の今の日本とオーバーラップしなくもない…。
一つの五感喪失に人々が慣れた頃、次の五感の喪失が始まるのだ。普通であれば、五感を失いパニック状態に陥った人々のシーンを挟むところだろうが、この映画は敢えてそれをしない。あくまでカメラは主人公の2人から離れることはない。五感の喪失は、主人公が見るニュースや、あるいは友人、そして本人がそうなるシーンしかない。だから、観る側の脳裏には、世界中で起きているであろう惨事を否応なくイメージしてしまう。まさに作り手の思うつぼ(^^;)

この作品が秀逸なのは、まだ関係が不安定な一組の恋人を主人公に据えていること。つかず離れずの状態が、五感喪失にリンクするかのように繰り返される。

嗅覚、味覚あたりの喪失までは、理性を保っていた人間も、聴覚を失うあたりから、暴動に走り始める。
そして、人類が最後に失う五感が視覚。
それまでに疎遠になっていた主人公二人は、視覚を失う前に再会する。そして、互いの愛を確かめるかのように抱き合う直前で、映像がとぎれ映画が終わる。そう、人類がすべての五感を失った瞬間だ。

二人はお互いの愛を確かめることはできただろうか?
五感を失った人類はその後、どんな末路を辿ったのだろうか?
いろいろと余韻を残してくれるにくい終わり方だ。

演出が演出だけに息苦しい気分にさせる部分があったものの、パニック映画にしては品の良い作品だったと思う。

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