大停電の夜に (映画 )
2005年12月12日
クリスマス・イブの夕暮れ時。
空から人工衛星の一部が落下し、東京への送電線が切断される。
光あふれる大都市が一瞬にして暗闇と化した。
路地裏でジャズバーを営むマスターと、ロウソク屋の女店主。
愛人のもとへ向かうサラリーマンとその妻。
過去の秘密を語る老主婦。
エレベーターに閉じ込められた中国人ホテルマンとOL。
元ヤクザと元恋人。
天体オタクの少年とモデルの少女。
聖なる夜に12人の男女物語が静かに始まる…。
上質な大人のファンタジーでした。
Bill Evans TrioのWaltz for Debbyのジャケットからレコードが取り出され、My Foolish Heartがかけられるシーンから映画が始まる。
映画はまさにこのMy Foolish Heartのようにスローに、そして静かに展開する。
これがまた心地良い。
「マグノリア」や「ラブアクチュアリー」のような群像劇で、語られるストーリーはいたってありきたり。
大停電との関連性も全くないし。
ロウソクや非常灯の微かな明かりで浮かび上がる登場人物。
この監督はこういう淡い映像を撮りたいがために、大停電という舞台を用意したんだと思う。
ありきたりなストーリーをすばらしい映像で、上質なファンタジーに昇華させていた。
カメラワークも絶品で、外国映画を見てるような錯覚さえ覚えた。
とくに豊川悦司演じるマスターが営む、ジャズバーのシーンがすばらしい。
不夜城、東京が闇に包まれたシーンは、正直、異様な印象を受けた。
現実にこういう状況に陥った時、東京はどうなるんだろう?
昨今の状況を考えると、略奪などの犯罪が横行しそう…;。
ともあれ、白い季節を間近に控え、心温まる時間を与えてくれた映画でした。