2018年6月17日
映画「あなたを抱きしめる日まで」を観て
タイトルからすると、コテコテのラブストーリーか、浪花節の効いた家族映画を想像してしまったが、ちょっと毛色が違った。
50年前に生き別れた息子を探すという点は、タイトルどおりだが、生き別れの原因が問題。
未婚でありながら妊娠してしまった主人公は、幼い息子とともに強制的に修道院に入れられてしまう。
重労働を強いられ、子どもと会えるの1日のうち1時間のみ、という過酷な生活が続く。
ある日、最愛の息子が、見知らぬ家族とともに、修道院から出ていってしまうのだ。
それから50年のときが過ぎた。
この修道院の行為には、裏があり、ストーリーが進むにつれて明らかになってくる。
本来であれば、この部分にスポットをあて、深刻な社会派ドラマに仕上げそうなものだが、本作はそうはしなかった。
信心深く庶民的なオバサンと、皮肉でインテリのジャーナリストとの息子探しの旅、あるいは珍道中といったぐあいだ。
最初は嫌味な存在だったジャーナリストも、表裏のないオバサンと接するうちに、硬直していた心が解きほぐれていく。
神を信じるオバサンと、神を信じないジャーナリストという対立構造に加え、終盤、同じ神を信じながらオバサンと対極的なシスターが登場する。
信仰って一体なんなのだろう?と考えさせる場面だった。
この作品に限らず、映画で登場する修道院は、おおむね悪の巣窟のような存在だ。
閉じられた空間、かつ信仰という壁に守られ、管理する側のやりたい放題だったのだろう。