2021年1月16日
BS1スペシャル「欲望の資本主義2021」を観て
正月番組と言えば、NHKで放送されるサッカー日本代表関連番組とこの「欲望の資本主義」だ。日本代表番組は元旦に「2021・森保一監督の決意」というものがあったようだが、すっかり見逃してしまった。NHKなので恐らく再放送してくれるだろう。
「欲望の資本主義2021」の方はしっかり視聴することができた。ただ、今回は周知のことばかりで、正直なところ満足感はイマイチ。とはいえ、経済に向き合う数少ない機会なので、知識を整理するうえでは良かったか。
番組では、COVID-19のパンデミックにより、以下のことがまざまざと露呈してきた、と語られていた。
・格差の拡大
・自由貿易のリスク
この2点を軸にメモ書きしておく。
格差の拡大
非正規社員、失業者、無業者→年金、生活保護も受けられず、死ぬまで労働を強いられる。 新たな階級、プレカリアートの出現。 プロレタリアート(労働者階級)からの非正規社員を示す造語。 階級は、人の帰属意識に関わる部分であり、結果として社会の亀裂をもたらす。
富の再生産が起きている。 すなわち、富む者が子に教育を受けさせ、富が伝承。 結果として、富が社会に分配されることはない。
1980年代の工業化から、金融経済への移行により不平等が加速。 金融経済の副産物としてICT革命が起き、資本が有形から無形に変わった。 近年、企業は設備投資ではなく、無形資産に集中している。 現代の労働者に突きつけられた「創造か、死か」の選択。
プラットフォーマーはダーティーなカジノである。 ユーザは彼らに囚われている。 無形資産による収益は企業の力になるばかりで、労働者の手に渡ることはない。
プラットフォーマーはダーティーなカジノである。 ユーザは彼らに囚われている。 無形資産による収益は企業の力になるばかりで、労働者の手に渡ることはない。
経済成長は格差縮小に必要。 第1次世界対戦後、ドイツ国民の心の洞察なしに、経済論理のみで賠償を請求。 結果として、ファシズムの台頭を招き、第2次世界対戦が勃発。
自由貿易のリスク
グローバリゼーションの始まりは、1972年の米中国交正常化。 その終焉は米中対立が高まった近年。 民主主義の驚異が、社会主義から、中国の全体主義へ。 ヨーロッパの多国籍メカニズムは、現在、分裂と機能停止の状態にある。
全員が豊かになれる時代の終焉は、1970年代にすでに始まっていた。 スタグフレーション、オイルショックの煽りを受け、アメリカの成長は失速。 日本ばかりでなく世界の目標であったアメリカの失速は、先頭者なきレースの始まりとなった。
(株式)市場は実態を反映しているわけではなく、ナラティブ(語り口)からもたらす期待値で変動している。 COVID-19の伝染が拡大する中であっても、株価は回復した。 すなわち、リーマン・ショック時の記憶がナラティブとなった。 トランプ大統領の人間性はともかく、経済的センスはあった。
経済学者の言葉
ポランニー
「市場が社会から切り離されるとき、
すべては市場の要求に従属することになる。
悪魔の挽臼となり、社会をすりつぶす。」
今回の同番組で語られていた現況は、まさに「悪魔の挽臼」が動き出している、ということではないか?
ケインズ
「自己の環境に慣れてしまう能力
それが人間の顕著な特性である」
パンデミックに対する人々の行動を予見するかのような言葉・・・喉元すぎればと言うやつか。