2021年3月21日
映画「判決、ふたつの希望」を観て
レバノン映画である。恐らく、同国の映画を観るのは初めて。
工事業者と住民の些細なトラブルが、やがて国を巻き込む裁判に発展するというもの。
物語の背景にあるのはレバノン紛争。気になったので、鑑賞後いろいろ調べてみた。中東特有の三つ巴、四つ巴の複数の勢力が絡み合った紛争だったようだ。イスラエル、パレスチナ、シリアに加え、周辺のヨーロッパ、ロシアそしてアメリカも絡む。さらに同国内では民兵も乱立し、泥沼以上の無法地帯に。始まったのは1970年代で、小規模の紛争は現在も続いているとのこと。自分の人生とほぼ同時進行で進んでいたこの紛争について、まったく知らなかったことに愕然としてしまった。
主人公の工事業者はパレスチナの難民、住民はレバノン人と、この紛争の縮図のような裁判が展開される。
知識がまったくないまま鑑賞したのだが、それでも十分楽しめる内容。監督はレバノン人。アメリカで映画制作に携わっていたようで、ハリウッド映画と言われても疑いようのない、グイグイ引き込まれるストーリー展開だった。
紛争前、レバノンの首都ベイルートは「中東のパリ」と言われるほどのリゾート都市だった。劇中でもそのことが語られている。それが一転して、泥沼の戦地と化した事実に、平和の危うさを感じずにはいられなかった。平和憲法?武力放棄?世界を見渡すと、無邪気には支持できない。